第5章 嫌われたくない
〜犬夜side〜
「せんぱ〜いっ!帰りましょ〜!!」
いつものように、一緒に帰ろうと誘う。
すると、先輩は目を合わせずに、誘いを断った。
…おかしい。目が合わないなんて。今まで先輩はずっと話すときは目を合わせてくれていたのに。
何かあるのだろうか。もしかして、嫌われてしまったのだろうか…。そんなの嫌だ。先輩に嫌われるなんて考えたくない。
入学式のとき、一生懸命働いている先輩がかっこよくって、そして、ときどき見せる笑顔が可愛くて。
気づいたら、先輩をずっと目で追いかけていた。
それからというもの、先輩が気になって仕方なくなって…。
部活の先輩に聞いて、名前を知って、教室まで見に行ったり、廊下ですれ違ってみたり…こんなの、ストーカーまがいな行為なのはわかっていたけれど、どんどんいろんな先輩を知って、どんどん先輩に惹かれていった。
そうして、我慢できなくなって、告白した。おかげで、友達になれたし、良かったんだけど。やっぱり少し物足りないわけで。でも嫌われたくないし…。
考えすぎて頭がパンクしそうだ。
「先輩まだかなぁ〜」
先に帰れと言われたんだけど、やっぱりなんだか少し気になるし門の前で待ってみる。
しばらくすると、何人かの生徒が門を出ていった。
「委員会終わったのかな」
そして、先輩が出てきた。
「へ?」
さっき言っていたことと違って、1人だった。