第14章 はなび
〜華美side〜
たくさんの人で溢れかえっている。
今日は花火大会。
私は気合十分に浴衣を着た。犬夜くんは甚平を着ている。
「先輩、はぐれないように手繋ぎましょー?」
「あ、そう、だね!」
犬夜くんと手を繋ぐ。
骨がしっかりしていて男らしい犬夜くんの手。
結局、今日まで、私は犬夜くんに、名前で呼んでほしいと言えなかった。
だから。今日こそは、犬夜くんに伝えようと思う。
犬夜くんに手を引かれ、連れていかれたのは、花火が見えやすいという、丘のような場所。
ちらほらと人がいるが、そのほとんどがカップルだった。
「あとは花火を待ちましょう!」
そう言って犬夜くんはその場に膝を抱えて座った。
私も続いて隣に座る。
少しの沈黙のあと、私は思い切ってあの作戦を実行した。
「あのさ…」
「どうしたんですか?先輩?」
私は、精一杯、上目遣いをして、言った。
「あの、そ、その、先輩じゃなくて、下の名前、で、呼んでほしい…な…?」