第9章 ワンコ、弱る。
〜華美side〜
「よし。」
今日から夏休みだった。
幸い、私は赤点を取らなかった。犬夜くんも。
「先輩っ、明日空いてます?」
「うん」
「じゃ、明日、先輩の家まで迎えに行きますね!どこに行くかは秘密です!」
なぜ秘密なのだろうと思いながらも、
夏休み初日から犬夜くんと、一緒にいられるなんて、嬉しいな。
そう思って、わくわくしながら支度をしていたときだった。
ピロリン♪
私のスマホが鳴る。
見ると、そこには犬夜くんからのメッセージだった。
[先輩、すみません!今日、行けなくなっちゃいました…本当にすみません…]
「えっ!」
思わず声が漏れる。
[私は大丈夫だけど、どうしたの?何かあった?]
とメッセージを送る。
ピロリン♪
[夏風邪ひいちゃったみたいで…]
[本当にすみません!]
それは大変だ。
と思い、すぐに返信する。
[それなら犬夜くん家まで行くよ!]
[何か必要な物ある?]
[いえ!大丈夫です!先輩にうつすわけにはいきませんから]
[大丈夫じゃない!ほら、必要な物は?ある?]
[本当にすみません…]
[お腹すいたんで、何か食べるものが欲しいです]
[わかった!ちょっと待っててね]
返信して、すぐに私は家を出た。
犬夜くんの家は、この前、犬夜くんに教えてもらっていた。
とても大きな家だった。
そして、両親は仕事でほとんど家にいないらしい。
「えっと…食べ物…あった」
私はスーパーでお目当ての物を買い、電車に乗って犬夜くんの家まで行く。
「ここだ」
インターホンを押してみる。
ピンポーン
しばらくすると、インターホンから声がした。
「あ、せんぱいっ…ドア、あけ、ます…っ」
ガチャっ
ドアの鍵が開く音だ。
ドアを開けて、中に入る。
「おじゃましまーす…」
すると階段から犬夜くんが降りてきていた。
「せんぱい、ほんとに、すみません…」
「犬夜くん、無理しなくていいから、ほら自分の部屋に戻って!」
「わ、かりました……」
私は犬夜くんについて行き、犬夜くんの部屋に入る。
犬夜くんの家は、外観通り、中も広かった。
部屋に入ってすぐ、犬夜くんはベッドに倒れ込んだ。
「うぅう…せんぱい、ほんとにすみません…」
「謝らなくていいから、ね?」
すると犬夜くんは小さく頷いた。