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Hit the floor

第2章 世界で一番最悪な夜






襟足のない少しだけ茶色い髪の毛に、
整った眉、ふっくらした唇、
いくつかわからない幼い顔立ち、
なのに色気のある、

全く知らない男性。



「…い、いえ、結構です…」


こういうの、ドラマではよく見るけど
実際にされるのとそれは違う。


なんて言ったって
私は今日、知らない人と一緒に飲む
気分ではないから。




断る私に目の前の男性が

「…約束していた女性に振られてしまって」

と自虐的に笑った。




その笑った顔が
あまりにも素敵で驚いた。



こんな男性でも
振られることがあるのか。

私と同じ気持ちなんだ、そう思うと
妙にわく親近感と
さっき味わった辛さがまた胸を締め付けた。





「一緒、ですね」

「え?」

「…私も、振られました。彼に」






「そうなんですか」と言う男性に
不思議と嫌な気持ちはしなくて
それはきっと同じ境遇という
同情の念を彼に抱いたから。



「…シャンパン、張り切って
 珍しい物を予約したんですけど
 1人で飲むには勿体無くて」



同じ意味合いの誘い文句。


でもつい何分か前に
聞いたそれとは違っていて

いつの間にか口が勝手に動く。




「…お言葉に甘えて、頂きます」






そう言った私に「良かった」
とホッとしたように笑う男性が
可愛くて。


このたった何分かの間に、
いくつもの表情を見せるこの男性。





余裕のあるその仕草から
「危険な男性」だということに、
気づけば良かった、だなんて
そんなの虫が良すぎる話。











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