第6章 戻った日常
手を繋いだままずいぶん走って
息を切らして目が合うと
どっちからというわけもなく
笑いが起きた。
「…っんで、智さんいるの!
あはは!彼の顔見ました?
あーおかし!」
「ふふ、いい顔してたね
ざまあみろってんだ」
笑い声も落ち着いた頃、
やっと視線が合う。
「……ありがとうございました」
「うんにゃ、勝手にやったことだし」
「…偶然ですか?」
そんな偶然あるだろうか。
だとしたらこれは運命なのか。
なんて
私の頭の中はどこまで能天気なの。
「…偶然、じゃないですよね?」
ふふ、と笑った彼はまた
「…さあ、ねえ?」
と、私の手を優しく引いて
「どこ行こっか」
なんてまるで
カップルのように
私の頬にキスをした。
END.
あの時は
握られた手が暖かくて。
向けられた眼差しが優しくて。
それだけでずっと、
幸せな時間が続くと思ってた。