第4章 きみを連れ出して
「……智さん、あの」
「ん?」
「…昨日の、私を助けに来たって」
冗談のように言ったそれは
ただの嘘には聞こえなくて。
黙った彼が暫くして小さく笑う。
「嘘だよ、冗談」
「………」
「何?」
「…ううん、ありがとう」
「え?何が?」
「昨日、一緒にいてくれて」
智さんがいなかったら
私は今頃どうしていただろう。
お酒を飲んで
彼を思って
少しでも泣いたりしただろうか。
私が笑うと、
驚いたような顔をした智さんが
「そんなの、お互い様でしょ?」と。
「さっきね連絡きてた彼女から」
その表情は柔らかくて。
智さんは本当に彼女のことが
好きなんだな、と
不思議と私まで嬉しくなった。
「…そっか、良かった」
「うん…埋め合わせ、したいんだって」
「今度こそシャンパン一緒に飲まないと」
「ふふ、いやもうあれは手に入らない」
「ちゃんで良かった」
と笑った智さんを
ズルい、そう思った。