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Hit the floor

第3章 Secret Lady






もうこの時は
完全に振られた記憶は無くて
智さんの質問に正解を探すことで
頭がいっぱいだった。





「…きら、いじゃない、けど」

「けど?」




こんなの
ズルいやり方だ。




そんな顔で、
そんな甘い声で、
私だけを見つめて




「嫌い」だなんて言える女性が
この世に存在するのだろうか。







私が言葉に詰まっていると
「ちゃん、」と呼ばれる。





「せっかくだから
 今日だけは、俺に付き合ってくんない?」

「…つき、あう?」

「ふふ、こんなシャンパン予約した男よ?
 これだけで終わると思う?」


その言葉に思い出す。



そうだ、彼には想っている
相手がいたんだった。

振られたとは言っていたけれど
彼を振る女性なんて
絶対美人で絶対スタイル良くて
絶対誰もが羨むようなそんな女性で。



少しでも期待した自分が
学習能力のないバカで
やりきれない。







「…クサいことしますね」

「ひっでえな、まだわかんねえじゃん」

「…ふふ、嘘嘘、付き合います」

「ん、じゃあ行くよ」



と手を引ひいて私をカウンターの
椅子から立ち上がらせる。



最後に視界に残ったのは
目の前にあるシャンパングラス。

つい話しすぎたせいで
もう泡は消えかかっていて。



それが彼の「危険」だと
教えてくれていたんだ、きっと。




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