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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第6章 謎の少年




「ごめん、緑谷。疑ってたんだよな、俺が敵なんじゃないかって。実を言うと、あの時はカマをかけたんだ。お前がワン・フォー・オールの次の継承者だって確証が、こっちにはなかったから……でも、もっとうまいカマのかけ方はあったよな。あんなド直球で核心つかれて、不安にならないわけないよな。危険な目にも遭わせて。本当にごめん」


 自嘲するような笑みを浮かべられ、出久は反応に困った。何しろ出久自身、翔に必要以上に関わるなとオールマイトに忠告されていたわけで、これは完全に自分の独断専行だ。まさか謝られるような展開になるとは思いも寄らなかった。


「いや、その、僕は……」


 何と返したらいいものか。「いいよ」と言うのも違うし、「気にしないで」と言うのもおかしいような? 返答に窮して慌てる出久を見て、翔の笑みがほんの少し柔らかくなる。


「でも、俺が、俺たちがどうしてワン・フォー・オールの秘密を知ったのかって話になると、ちょっとややこしくて。いや……ややこしいんじゃないな。怖いんだ。単純に。知られるのが怖くて、覚悟が……何しろ、信じてもらえるかどうかも分からないような話だから」


 怖い。


 彼の放ったその言葉が耳を伝い、心臓にぴたりと吸いつくような感覚を出久は得た。怖い。圧倒的な戦闘力を持つにも関わらず、それが彼の、彼らの何か深い部分を物語っている気がした。


「でも、これだけははっきり言っておくよ。俺は敵じゃない。ここにいる二人もだ……ここでのびてる敵たちについても、後で説明する」


 翔はゆっくりと、言い含めるような調子で言った。その眼差しは視線を交わらせたが最後、二度と目をそらせなくなりそうなほど真剣だ。出久は彼の頬に、小さな赤い斑点が散っているのに気づいた。血。怪我ではない。おそらく先ほどの筋肉男の返り血だ。


 どうしてだろう。そうした容赦ない暴力の跡を伺わせて尚、彼の瞳の明るさが一分も曇らないのは。


「話すよ。今話しておけることは、全部。疑わせておいて虫の良い話だけど、ひとまず信じて付いてきてくれないか? 俺たちの『家』に」

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