【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
「一ノ瀬、これ借りてたリーディングのノート! ほんと助かった~~! ありがとな!」
「いや、こんなもんでいいならいつでも貸すよ」
「え、てか待って一ノ瀬くん書くとき鉛筆なの!? シャーペンとか持ってないんや!?」
「ああ、うん。なんかこっちの方が使いやすくてさ」
「麗日今気づいたのかよ、一ノ瀬転校初日から鉛筆使ってたぜ」
「シャーペンだと、ほら、俺爪がとがってるから滑っちゃうんだよね。鉛筆ならこう……いい具合に食い込むというか」
「食い込む」
一日の授業がすべて終わり、放課後。切島から受け取ったノートを鞄にしまいつつ、お茶子と言葉を交わすのはこのクラスに転校してちょうど一週間を迎える一ノ瀬翔だ。
転校初日に突然の対人戦闘訓練という洗礼を受けたものの、1ーAの中でも指折りの戦闘力を誇る爆豪勝己を難なく打ち破り、晴れてクラスメイトの一員として認められた。転校してきてから今日まで、彼の周りに絶えず人が集まっているのがその証拠だ。まあ、もしあの訓練で負けていたとしても翔はすぐにクラスに打ち解けられていただろう、と、出久は推測する。ただでさえ、あの攻撃性の権化とも言える勝己を何の抵抗もなくすんなりと受け入れるような傑物揃いのクラスだ、穏やかで物腰の優しい彼がクラスに馴染めない理由などなかった。
翔が転校してきて一週間――つまり、彼が出久の受け継いだNo.1ヒーロー・オールマイトの個性、ワン・フォー・オールの秘密を知っていると出久に暴露してから、一週間。出久は翔を囲むクラスメイトの輪を遠巻きにしつつも、ずっと彼の動向を目で追い続けていた。
ごく一部の人間しか知らないはずの、ワン・フォー・オールの秘密を知る転校生。どうして彼がそれを知っているのか。そしてそれを出久に暴露した意図は何なのか。それを知りたくて、持ち前のオタクスキルを発揮してこの一週間穴のあくほど観察してはみたものの、得られた情報は皆無に等しかった。