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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第5章 懐疑




「な、何言ってるんですか先生、俺、」
「お前を責めてるんじゃない。俺はお前に戦い方を教えたのが誰なのか知りたいだけだ。年端もいかない子どもをこんな立派な戦士に鍛え上げた奴と、その目的をな」


 教師らしい優しく諭すような問いつめをする相澤だが、翔の目に浮かぶ怯えのような色はみるみる濃くなっていく。先ほどまで凛とした態度で、高校生らしからぬ大人びた言動をしていた少年が、まるで虐待を受けている子どものように小さく身を縮める様を見て、相澤は眉をひそめた。これでは、まるで――。


「あ~らら、翔。どこ行ってたんだよお前。探したんだぞぉ」


 突如、この場にそぐわない間の延びた声が廊下に響いた。翔の肩からするりと腕が回り、体重をかけられた翔の身体が斜めに傾く。相澤は僅かに目をみはり、翔の背後に突如現れた人物を見つめた。


「教室に行ってもいねーもんだから、職員室まで来ちゃったよ。こぉんなところで、先生と何のお話してたんだぁ?」
「な、凪人……!?」


 翔が振り向き、驚いたように声を上げる。そこにいたのはよれよれの白衣を身に纏った男だった。ひょろりと小枝のような心許ない体つきで、身長は翔と同じか少し高いくらいだ。年の頃は相当若く見えるが、いかにも力の入っていない寛いだ所作はそれなりに年を食っているようでもある。栗色の髪は工作用のはさみで切ったのかと思うほど不揃いなざんばら髪で、少し赤みがかった紅茶色の瞳は弧を描き妙ににやついているように見える。奇妙な風体の人物が突如乱入したことに最初は驚いた相澤だったが、すぐに目の力を緩めて息をついた。それが既に見知った人物だったからだ。


「何してんだお前! 今日は寝てろって言っただろ!」
「おいおい、その言い方はねぇだろ~。俺一応お前の保護者だぜぇ? 転校初日につつがなく学校生活を過ごせたのか、見に来てやったってのによぉ」


 今日クラスメートたちに接していたのとは打って変わり、声を荒らげて叱咤する翔と、それを軟派な態度で受け流す白衣の男。相澤は直感を得た。この幼い優秀な戦士を育て上げたのはこの男だ、と。


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