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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第4章 秘密を知る者




「あ、そうだ。もっと大事なこと。言っておかなきゃいけないんだった」


 転校生は今思い出した、という風に手を口に当てて言った。今朝会ったばかりで「大事なこと」と言われてもあまり見当がつかず、学校関係の質問だろうかと思い「大事なこと? 何かな?」と聞き返す。


 しかしその後に転校生が続けたのは、出久が全く予想だにしていなかった、予想もしえないような言葉だった。


「ワン・フォー・オールの使い方には気をつけた方がいいぞ。まだものにできてないみたいだし。ビビってずっと使わないのもあれだけど、体を酷使して爆弾作ったら、ヒーローになるどころの話じゃなくなっちゃうぞ」


 転校生は何でもないことのように言い放ったが、出久はその言葉の意味を飲み込むまでしばらく時間がかかった。それほどまでに衝撃的な台詞だったのだ。


 ワン・フォー・オール。それは出久がNo.1ヒーロー・オールマイトに認められ授けられた唯一無二の個性だ。個性がこの世に発現してより聖火のごとく受け継がれ、ひとたび手に入れれば何人をも寄せつけない超人的なパワーを発揮することができる。しかし器である肉体が十分に仕上がらないままその個性を受け継いだ出久は、ひとたびワン・フォー・オールを使えばたちまちその部位が血を噴いて壊れてしまう、まさに諸刃の剣を抱えたような状態でスタートラインに立つことになった。


 今でもその個性使用による肉体の損傷は解決することができず、げんに今日の試合では万物創造の個性を持つ八百万と対戦したが、「被害を最小限に」という相澤の言葉に必要以上に縛られ一度も個性を使わずに引き分けで終わってしまった。いずれにせよ、ワン・フォー・オールが「他人に譲渡する個性」だということ、オールマイトがそれを出久に譲渡したことは、当事者であるオールマイトと出久を始めごくごく一部の人間しか知らない極秘事項だ。


 その門外秘のワン・フォー・オールを、転校生は出久の個性だと言った。誰にも言っていないはずの、オールマイトと自分しか知らないはずのことを今、口にしたのだ。


 そう理解した瞬間、出久は頭のてっぺんから一気に血の気が失われていくのを感じた。心臓が妙に強く脈を打ち始め、普段どおりに呼吸することが難しくなってくる。


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