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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第3章 対人戦闘訓練




 それは揶揄っているのでも、嘲っているのでもない、ただ厳然と事実を突きつけるある意味もっとも冷酷な言葉だった。自分はお前より強い。だから忠告してやったのだ、と。

勝己はいよいよ憤りと悔しさとを劣等感とを抑えきれず爆発してしまいそうだったが、それでも対戦中のように怒鳴り散らすようなことはしなかった。負けは負け、どれだけ悔しかろうと感情をさらけ出せば、尚更惨めさが増すということが分かっていたからだ。その代わりとばかりに、下唇を皮が破けて血が滲みそうなほどに噛みしめ、ぎらぎらと光る橙色の目で転校生をねめつける。だが、それでも転校生がその涼やかな表情を崩すことはなかった。


 へたり込んでいる勝己に向かってぺこりと一礼し、クラスメイト達の方に視線を向ける。その赤色の目が優しく緩み、年相応の照れているようなあどけない笑顔が形作られると、声も出せずにいた1ーAの生徒達の緊張が一気に解けた。顔を見合わせ苦笑いをしながら、転校生の闘いぶりについて口々に感想を交わし始める。


「や、やっべ~……」
「何……何つーかもう……やべーな」
「あの爆豪が手も足も出ないなんて……」
「え、まじで何者? 滅茶苦茶強ェじゃんよ」
「またチートが一人増えた……」


 とにかく言葉が出てこない者、戦闘に長けた勝己があっさり負けたことに恐怖を感じる者、更なる実力者が現れたことに絶望する者。その反応は様々だが、皆転校生の闘いぶりを畏れているという点では一致していた。先ほどと同じように転校生に声をかけたり質問したりしているが、向ける視線が試合の前と後ではまったく違っている。


 好奇に晒され、どこかお客様扱いを受けていた転校生は、勝己との闘いで完全に1-Aのクラスメイトとして迎え入れられたようだった。


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