• テキストサイズ

【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第7章 アザミの家



 あまりじろじろ見るのも失礼な気がして忙しなく視線を上げ下げする出久を、男は微笑ましいと言わんばかりの表情で見つめた。木枝のように節くれ立った細長い指で、自分の白銀の頭を指し示す。


「目と髪の色が違う、だろ? この前雄英にお邪魔したときはねぇ、カラーコンタクトとウィッグを付けてたんだ。だからこの道化(ピエロ)みたいな色が素なんだよね。目立つし、自分でもこの色が気に入らないから、外に出るときは必ずカラコンウィッグを装備してる。ゲームのアバタースキンみたいでカッコ良いだろ?」


 口の端に力を入れて無理につりあげるような、いびつな笑みを浮かべて男は言った。この人は笑うのが苦手なのかも知れない、と出久は思った。


「雄英には翔の保護者として出入りしたんだ。いちおうこの施設の責任者ってことになってるからね。俺みたいな人間が責任者なんて、笑い話にもならないけど」


 男はしゃべりながら、ゆっくりと部屋の入り口にいる出久の方に歩み寄ってきた。血が通っているのか疑わしいほど青白くくすんだ手が、白衣の袖から差し出される。


「改めて自己紹介させてもらうよ。特別養護施設「アザミの家」の院長、白銀凪人だ。よろしくね」
「み、緑谷出久です。初めまして」


 反射的に自己紹介を返し、差し出された手を握る。と、5月の陽気など欠片も感じさせないぞっとするほどの冷たさが返ってきた。驚いて思わず手を離しそうになったのをこらえて、視線を上げる。


 こうして間近で見ると、男は意外にも整った顔立ちをしていた。少なくとも自分とは比べるべくもない。しかし深く刻まれたような濃い隈やぼさぼさの髪の毛ばかりが目立って、顔の良さをことごとく打ち消しているように見えた。目や髪の色を気にするより、まず身だしなみを整えるところから始めても良いんじゃないか、と失礼を承知で思う。


「まぁまぁ、まずは掛けて。散らかってて悪いけど」


/ 107ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp