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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第7章 アザミの家




「あなたは……!」

 出久は驚愕して、思わず声を漏らした。目の前にいる男が、既に見たことのある人物だったからだ。

「が、学校ですれ違いましたよね! 確か……一ノ瀬くんが転校してきた日……」

 そう、翔が雄英にやって来たまさにその日、出久はこの男に遭遇したのだった。翔にワン・フォー・オールの秘密について言及された直後で、混乱の最中にいる時だった。思考が凍りついた状態のまま、出久は雄英の校舎の1年生の教室がある棟に帰ろうとしていた。その途中の渡り廊下で肩がぶつかったのだ。

『あ、ご、ごめんなさ、』
『あァ。いや、こちらこそ』

 驚いてとびすさった出久に、相手は気を悪くした風でもなくひょいと片手をあげて立ち去っていった。ーーその男が今、この施設のボス然として優雅に執務机に腰掛けているのだ……驚かないはずがなかった。

 しかし、よく覚えていたなと自分でも思う。あの時は頭が真っ白になっていて周りを見る余裕などなかったはずなのに、男の容姿はしっかりと脳裏に焼き付いていた。ひょろりと心許ない体躯によれよれの白衣。隈が浮いて陰湿な、しかし独特の輝きを放つ両目。冷血にも、優しそうにも見える奇妙な顔立ち。言葉を交わしたのは一瞬だったが、くたびれた容貌とどこか異質な面立ちはインパクトが強くすぐに思い出せた。

「……あァ、そうだったかな。あんまり覚えてないけど」

 目の前の男は自分の脳内の記憶を探るように視線を上向けたが、すぐによく分からないというふうに曖昧に微笑んだ。あちらは出久のことを覚えていないらしい。この地味な容姿だ、無理からぬことだと思う。

「でも、あの時と何だか……」

 不意にわき出た違和感に出久は眉を寄せ、記憶の中の男と目の前の男をよく見比べてみた。違和感の正体はすぐに分かった。雄英で会った時と目と髪の色が違うのだ。あの時は目も髪も、くすんだ赤茶とでも言えばいいか、別段珍しくもない色をしていた。だが今ここにいる男は、白銀の髪に白と赤のオッドアイと、とても奇抜な風貌をしている。


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