第2章 子供が愛想ないからって二人目を作るな
弟?弟だって?なんてことだ、どうしよう、どのみち殺される。自分だけが生き残るならまだしも、私は弟を守って戦うことはできない、絶対に無理だ
私はとりとめもなくぐるぐると考える
そうだ、情を移さなければいい、何を取り乱したんだ、そうだ、私は何も変わらない、今までどおり、今までどおりでいいんだ
深呼吸して立ち止まる
見殺しにするんだ、お前は
自責の声が聞こえて足がすくんだ
勝てないと決めつけて、お前は親を見殺しにするだけじゃなく、弟まで殺すのか
違う、決めつけてなんかない、本当に勝てないんだ
虐殺が起こるとわかっていて見殺しにするなんて、お前も人殺しと何らかわりないじゃないか
違う、止められないんだ、ヒアシだって理解してる
もしかして自分は、見殺しを正当化する理由を探しているのか?
心臓が氷水に浸されたかのように悪寒が駆け巡る
違う、そんなんじゃない、これは仕方のないことで、仕方のない、仕方がない
息が上がる、家とはま逆の方向に脚が動く
私が殺すのか?
「?」
息が上がる、恐怖で足がすくむ、私はすべてを知っている。
私は共犯だ、私も、彼の陰謀を手伝うのだ
「どうした?すごい汗だ」
イタチは私を気遣うように覗き込む
違う、私が殺すんじゃないんだ、彼だ、彼がやるのだ。私は知ってるだけだ、助けられないなら、せめて自分だけでも助からないといけない、たとえ誰を見殺しにしても
「う」
せり上がる胃液に思わず嘔吐く、縮こまるとイタチは私の名前を呼んで背中をさすった
逃げるように後ろに下がり、短く呼吸を繰り返す
「ごめんなさい、少し気分が悪いだけなの」
よく見ればイタチは泥だらけだ、おそらく修行でもしてたのだろう
「歩けるか?」
無理に手を貸そうとはせず、イタチは立ち上がって声をかけた。その声色に少し落ち着きを取り戻す
ごめんなさい、ありがとう、どっちを言おうか迷いながらイタチの顔を見た
その瞬間、全身から血の気が引いていくのを感じる、写輪眼、赤い瞳が私を見下ろしていた
「あ…」
声が出ない、怖い、殺される
「?」
殺される?私が戦う?逃げる?私は死ぬの?様々な思いがぶつかり合い、心臓が早鐘を打つ
「目……」
絞り出した声に、イタチは気づいたのか写輪眼を戻す
次の瞬間、私は今度こそ吐いた