第7章 僕だけの青いイチゴ
« ツッキー!オレの話聞いてる?! »
「···聞いてるよ」
あ~、うるさ。
朝っぱらから、かれこれ15分も山口の電話の相手をしている。
その内容って言うのも、雪が降ってるから出かけない?とか···
なんでせっかく部活が休みだって言うのに、こんな寒空の、しかも雪の中を山口と出掛けなきゃいけないんだよ。
今日はクリスマス。
そんな街全体が浮き足立ってる日に、男二人で街をあるいてどうするっていうんだ?
ホント···馬鹿デショ。
「山口」
« あ、やっと行く気になってくれたの? »
「違う。悪いけど、僕これから勉強するから、じゃあね」
« え?あ、ちょっと!ツッ··· »
自分の言いたい事だけ伝えて、通話を切った。
恐らくまた山口がかけてくるだろうと踏んで、ご丁寧に電源まで落とす。
スマホをベッドに放り投げ、夜にでもやればいいかと思っていた課題に手を付け始めた。
どれくらい時間が経ったのか、喉の乾きに負けて手を止めて時計を見る。
「どうりで」
グンっと背伸びをして、喉の乾きを満たす為にリビングへと向かった。
明「あ、蛍ちょうど良かった。今から呼びに行こうかと思ってたんだよ」
「兄ちゃん?なんでいるの?」
大学へ行ってから一人暮らしを始めた兄ちゃんは、自分が暇になると何かと家に来ては僕の世話を焼く。
それが時には、お節介だと思うこともあるけど、ま、暇潰しにはちょうどいい相手だし?
明「なんでいるのって、蛍は冷たいなぁ···クリスマスだから蛍が寂しいんじゃないかなって実家に戻って来たのにさ」
寂しい?
僕が?
「クリスマスに弟の心配をして実家に戻って来るとか、彼女がいないってことをお披露目にでもしに来たの?」
明「それを言われると返す言葉がないよ···」
ハハッ···やっぱりまだ彼女いないのか。
···それは、僕だって人のこと言える立場じゃないケドね。
「っていうより、何なのコレ。怪しげな物でテーブルが埋め尽くされてるんだけど」
いつから来てたのかわかんないけど、最近凝り出した兄ちゃんの手料理らしき物体が、そこに所狭しと並べられている。
明「今日はクリスマスだから、腕によりをかけて頑張っちゃいました!てへ!」
いい年した男が、てへ、とか···
これはローストビーフで、こっちがローストチキンで。