第8章 9月『Open Campus』
(真田視点)
「真田先生。少し、いいですか。」
授業が終わり、
チャイムの音が教室を包む中、
がスタスタと歩いてきた。
その手にはプリントが1枚ある。
「お、おう!どうした?」
から話しかけられるなんて
滅多に無いからか、
一瞬どきりと心臓が鳴る。
思わず声も上擦った。
「あの、これ。……オープンキャンパスの。」
が俺に渡してきたのは
始業式に渡しておいたオープンキャンパスの
提出プリントだ。
丁寧に半分に折り畳まれてはいるが、
オープンキャンパスという文字が
紙から透けて見えて、すぐ分かった。
「…もしかして、行ってきたのか?」
「はい。」
「そ、そっか……!」
その答えに俺は思わず口が緩んだ。
なんだかんだ言って、
もやっぱりClassAだし
真面目なんだな。感心感心!!
俺の言う事もちょっとずつ
聞く耳を持ってくれるようになったのかも。
………そうだったら、凄く嬉しい。
「…で、どうだった?楽しかったか?」
「………まぁ、楽しかった……ような、
気がします……?」
少し首を傾げて言うに
確信は無いみたいだが、
とりあえずオープンキャンパスに
行けた事だけでも
にとっては進歩だ。
「そっか!良かったな。良い経験が出来て。」
「…………はい。それじゃ、僕はこれで。」
「……お、おう。
また詳しく話聞かせてくれよな。」
はぺこりと頭を下げて
教室を出てスタスタと去っていく。
「………そういえば、何処の大学
見に行ったんだろ?」
がいなくなってから、
半分に折り畳まれたプリントを開ける。
「……………なっ………。」
そこには、の綺麗な字と共に、
周りに矢印でコメントとイラストが
たくさん描かれていた。