第6章 Fifth
今日、彼女に会ったらなんと言おうか。久しぶり、会いたかった、元気だった……どれも違う気がする。気持ちを言葉にすると、どうしてこうも軽々しく聞こえてしまうのだろうか。
「朱音ちゃん……」
小さく呟いた声は、すっ、と吹き抜けた風に乗って流された。肌を刺す冷たい風は、彼のマフラーをひらりと靡かせ、同時に足元の、積もりたてのサラサラとした雪をふわりと舞い上げた。
その時である、背後からきし、と真新しい雪を踏みしめる音が聞こえたのは。
待ち人たちが来たのだと思い、振り返ろうとした時だ。思いもかけないことが、吹雪を困惑させた。
「吹雪くん」
そっとかけられた、ふわりと響いた優しい声。
え、と一瞬思考が止まる。まさか。今、自身の名前を呼んだ声は、待ち人たちのどちらの声でもない。彼の聞き間違えでなければ、ずっと聞きたくて、待ち望んでいた声だ。
困惑しつつも、ゆっくりと振り返ると、そこには……。