第6章 Fifth
目の前には、先ほど昇り切ったばかりの朝日がキラキラと輝いている。風は確かに冷たいが、日が昇ってしまえば、やはり暖かさもほんとりと感じられる。もちろん、外気は氷点下の気温のため、気持ち的な意味であるが。
白恋中のグラウンドにて、この寒い中、朝から人待ちをしているのは、白恋中サッカー部所属の吹雪士郎である。一昨日のことだ。彼の携帯に、24日の朝7時半に、白恋中グラウンドにて、会いたいという連絡が入ったのは。相手は同じく白恋中サッカー部の女子部員、荒谷紺子と真都路珠香であった。普段から顔を合わせているふたりが、一体何用でわざわざ自分を呼び出したのかは見当もつかなかったが、人の良い吹雪である。二つ返事で了承の意を伝えた。
さて、待ち人たちが来るまではまだ少し時間があるが、一体何をして時間を潰していようか。と、ここで彼の頭に思い浮かんだのが、最愛の彼女である、葉山朱音のことだ。本日25日は、彼が待ち望んでいた日であった。当然、朱音に会いたいという気持ちからである。彼女は今頃、支度を整えている頃だろうか。確か、10時過ぎ発の便だったはずだ。
朱音に会うのは本当に久しぶりである。彼女は元気にしているだろうか。メールのやり取りや電話はしているが、やはり顔を見て、否、実際に会って話がしたかった。遠距離恋愛とは辛いものだ、と身にしみて感じていたのだ。