第4章 Third
吹雪のことを考えていれば、ただ座っているだけの機内も苦ではない。時計に目をやると、あれからすでに30分が経過しているということに驚きながらも、あと1時間で到着するということに、益々もって気持ちが昂る。
朱音は、これでは眠るどころではないな、と思いながらも、目を閉じ、到着を待った。
それから1時間。はじめこそ眠れないと思っていたが、気がつくとうつらうつらとしていた。しかし、到着アナウンスが耳に入ると同時に意識が覚醒し、ついに来たのだと、再び気分が高揚するのを感じた。そして朱音の意識は再び吹雪に対する気持ちで満たされた。
現在時刻は22時前である。到着した後、荷物を受け取りながら、案内に従い、自身に用意されているというホテルに向かっている。空港から一歩外に出ると、キン、と冷えた外気に身震いした。機内の暖かい空気に慣れた身には少々辛かった。
ホテルは空港前のビジネスホテルである。中学生で、ビジネスホテルにひとりで泊まることになるとは、と内心苦笑しながらも足を進め、部屋に入るとともに、ふぅ、と息を吐き出した。初めてのことばかりで緊張していたのも相まって、早々に眠気がやってきたのだ。両親には無事に到着の旨連絡を入れ、暖房をつけたまま浴室に向かい、シャワーを浴びた。髪を乾かすのも億劫に思えるほどの眠気に襲われていたが、なんとかこなし、ようやくベッドに入り込む。北海道のホテルらしく、電気毛布が付属であったのは救いであった。ここから白恋中までは紺子と珠香が案内をしてくれるというから、問題はない。明日の朝、迎えに来てくれると言っていた。約束が6時半であるため、その時間から逆算し、携帯のアラームをセットした後、眠りについた。