第1章 プロローグ
これは、とある世界にある、とある王国の噺…
湖に浮かぶ華やかな王都、自然豊かな国土、活気溢れる国の民…そこは幸福な国でした。
しかし、決して平和な国ではありませんでした。
王国が抱えるただ一つの悩みは、数百年に渡り現在も続く──蛮族との戦い。
村を荒し、民の生活を脅かす…好戦的で乱暴な蛮族は、自分達の欲のままに王国に恐怖を与えます。
国民を思う王国の王は、常に頭を悩ませ、心を痛めていました。
どうにかして戦を終わらせたい…王国の王は和平を望み、やがて答えを出しました。
蛮族の元へ使者を送ろう、停戦協定を結ぼうと。
使者として選ばれたのは、王国軍に所属していた一人の騎士…心優しい彼は、快くその任を受けました。
しかし無情にも、それは悲劇へ繋がってしまうのです。
王国の王が使者を送り出したのと、丁度同じ時期…
蛮族にも変化がありました。
それは──王の交代。
蛮族の王とは、代々最も強き男が成るのです。
当時の王に戦いを挑み、勝利を収めたのは…王の三人の子のうち、最も強く凶暴だった次男でした。
王の交代から数日後、若き蛮族の王の元へ、王国の使者が現れます。
停戦協定の交渉に一切の聴く耳を持たず、蛮族の王は王国の使者を殺してしまいました。
王国の平和の為に、己の危険など顧みず使者となった騎士を、その優しさを踏み躙った蛮族。
王国の王はひどく悲しみ、そして怒りました。
こうして、王国と蛮族の戦いは、その火蓋を再び切って落とされたのです。