第8章 summer memory③
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明くる日の土曜日の夕方、私はとある人の家へ訪れた。
時刻は夕方ともあって、昼間の暑さに比べるとやや涼しかった。
スマホのナビで目的の家の前まで来ると、深呼吸してインターフォンを鳴らした・・・
"岩泉"と書いた表札の家の・・・。
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「無事についたみたいだな、迷ったか?」
「いえ!ナビ通りに来たし、岩泉さんの教えてくれた目印も凄く分かりやすかったです!」
岩泉さんの家のリビングへと案内されて、冷たいお茶を頂く。私と向かい合わせのソファーにどっかりと座った岩泉さんは、相変わらずキリッとしていて、いかにも先生!って感じでかっこよく見えた。
「すみません、突然連絡して、おうちまでお邪魔して・・・」
「俺は構わねぇよ。でも悪かったな、俺も高校生の練習があるから、こんな時間でしか会えなくてよ」
青城でコーチをしている岩泉さんにアポを取るのは難しいと思った。前に、及川さんが言ってた。青城は土日は大体1日練習か、練習試合を行っているって。
今日も、そのどちらかをこなして、私との約束に間に合うようにしてくれたんだろうな・・・。
「本当に、ありがとうございます」
「構わねぇよ。で、単刀直入に言う、話ってなんだ?その顔で何となく察しはついてるが・・・」
うっ・・・岩泉さんは男らしくてカッコいいけれど、この鋭い視線に慣れるのには、まだ少し時間がかかりそうだ・・・
(ていうか、私、どんな顔してるんだろう・・・そんなにわかりやすいのかな?)
私はすぅっと息を吐いて心を落ち着かせる。そして、真っ直ぐに岩泉さんを見据えた。
「及川さんの・・・ことです」
「だな・・・」
だなって・・・
岩泉さんは2リットルのスポーツドリンクを煽りながら、私を見た。