第5章 spring memory⑤
「いいよ」
食材を買いに行った昨日と今日一日、一緒にいたからかな?
叔母さんのためにご飯の材料買いに行ったり、作ったり、花束を用意したり・・・岩泉さんといた時は心から嬉しそうにじゃれ合ったり・・・
何だか初めて会った時の彼とは、違って見えて・・・
私はそう返していた。
「私も・・・叩いてごめん」
なんでだろう、初めの頃は顔を見るたびに思い出してはムカついていたのに・・・
なんだかそんなこともあったな・・・なんて流せられるくらいに彼との距離は自然と近づいていた気がした。
及川さんは、一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐにいつもの余裕を含んだ笑みを見せた。
「ホントだよ。超痛かったんだかんね」
「自分が酔っ払ってたのが悪いんでしょ、自業自得よっ」
なんて笑い合って二人して月を見上げ、月見酒をあおった。
なんだろう・・・前までは一緒にすらいたくなかったのに・・・
今はこの、隣に座っているのが妙にしっくりきてる。
それに・・・何だろ。さっき見つめられた時から、及川さんの瞳が頭を離れない。鼓動が、早く脈打つ。でも、これはきっと・・・
(・・・きっとお酒のせい、お酒のせい)
私はもう一度ビールをあおった。
芽生えた想いには、気付かないふりをしてーーー・・・