第35章 a LOVELY TONE
「泣かないで・・・。泣くのは、俺の話きいてから幾らでも泣いていいから」
きゅうっと、私を抱きしめて、
子供をあやすようにぽんぽんと、背中を撫でてくれる。
その温もりと声に・・・ゆっくりと私は心を落ち着かせていった。
「りお・・・」
それを感じて、及川さんは私の耳元に、唇を寄せた。
甘く、優しく、愛しい声で、彼は言葉をくれた。
「好き・・・」
「ぇ・・・」
「大好き」
「・・・・・・」
「愛してる」
次々と告げられる愛のある言葉を、私は静かに聞いた。
やがて及川さんは私を開放して、私たちは見つめ合った。
「今までお前に、たっくさんこんな言葉を伝えてきた。伝えられる距離に、お前はいてくれた・・・。それがかけがえない幸せな事だって、俺はずっと思ってる」
「・・・・・・・・・」
「だけどね・・・俺、まだお前に伝えてない言葉が一つだけあるんだ。ずっと、ずっと伝えようとしてきた言葉、言わせてほしい」
夕陽が私たちを、優しく照らしていく。
夕陽が2つの影を・・・1つに繋ぐ。
「・・・・・・うん」
私は静かに頷いた。
及川さんは微笑んで、私の左手を取り、
「りお・・・」
そしてその薬指に・・・
優しく輝く輪を嵌めてくれた・・・