第29章 1 years later②
ーーー・・・
ガタッガタタッ
騒がしい音が玄関でこだました。
扉を閉め、外との境界を作った途端、私の体は扉に押し付けられて及川さんに抱きしめられた。貰った花束は玄関の棚の上にひょいっと乗せられる。
「んっ」
そしてすぐに唇を塞がれて、角度を変えて何度も何度も重なる。
次第に息苦しくなって僅かに口を開いた所に、及川さんの熱い舌が入り込んできた。
「ふっ・・・ぁ・・・」
歯列をなぞって、上顎を撫で、それから私の舌を絡めとる。ザラりとした感覚にびくっと肩が震える。
その反応を楽しむように、及川さんの瞳は笑ってる。
私の頬に手を添えて動かないように固定すると、私の舌をちゅっと吸い上げる。
「~〜〜っ」
つま先立ちじゃ、もう立っていられないくらいのキスに私は制しを求めて彼の胸板を叩いた。
「何、もうギブアップなの?」
唇を離して至近距離で私を見下ろす及川さん。
物足りなそうに舌で唇を舐める仕草が妖艶で、大人の男としての色気が溢れてる。
「いつもは勝気に俺のこと言い負かしてくんのに」
「こ・・・っ、こういう事は専門外なのっ」
肩で息を整えて、涙目になりながら及川さんを見上げた。
だって急にこんなキスされたら、誰だって腰抜けちゃうよ。
「って、ちょっと!」
及川さんの手が、背中に周り、Tシャツの中へと入ってくる。するすると肌を撫でる熱い手の感触に、私は逃れたいのに扉と及川さんに挟まれて身動きが取れない。
ブラジャーのホックに手がかかった途端、パチンと簡単にそれを解かれた。
「わ〜っ、待って待って!」
胸部の解放感に慌てて片腕で押さえ、もう片方の手で及川さんの引き締まった腕を掴んだ。
「今度は何?」
ちょっと不機嫌そうに唇を尖らせてる。
いや、こっちが何って話ですよ!
「こ、ここでするの!?」
「嫌なら部屋でもいいけど」
「そ、う、い、う、こ、と、じゃ、な、く、て!」
「何?母さんいるの?」
「日勤でいないけど・・・」
「ほーんと、空気の読める母親だよね」
作者もそう思います。
「じゃあいいよね」
及川さんは再び顔を近づけようとするから、私はその顔を突っぱねた。