第28章 1 years later①
「ね・・・。こっちに帰ってきたら、まず何がしたい?」
そう話題を振ってみると、及川さんは画面の向こうで考えるようにうーんと唸った。
《和食。》
「ん?」
《和食が食べたい》
シンプルな答えに少し口元が緩まる。
和食、ね・・・メモしておかなくちゃ。
彼が帰ってきて、私の作ったご飯を食べてくれることを想像する・・・
煮物、美味しく作れるようになったねって褒めてくれるかな?
味噌汁のダシ、変えたの気付くかな?
苦手な野菜、さりげなく混ぜたら・・・怒るかな?
《後、家の風呂入りたい。こっちのバスルーム狭いんだよね》
うちのお風呂、広いもんね。
冬至の日の夜、お風呂掃除しようとして開けたら、湯船で及川さんが柚子浮かべて寝かけてたの見つけて悲鳴あげたの、思い出した。
お気に入りの入浴剤入れて・・・のんびり浸かって疲れをとって欲しいな。
《それから、久々に俺の部屋の布団でぐっすり眠りたいね》
イタリアにはきっとない・・・畳の匂いが落ち着く及川さんの自室で、干したばかりで太陽の温もりが残るふかふかの布団で寝かせてあげたい・・・
帰ってきたら、及川さんにしてあげたいこと、たくさんあるよ。
《りおは?》
「へ?」
《りおは俺が帰ってきたら、何がしたい?》
彼の質問に、掃除する手が止めて、うーんと考える。
帰ってきたら、かぁ・・・
会いたいとは毎日思ってたけどいざ会えますってなったら、何したいんだろう私・・・
及川さんの言うように、ご飯を作ってあげたりもしたいし、
この辺りに新しく出来たカフェにも連れていきたい!
そこで絶品のパンケーキを食べながらイタリアの土産話を聞くのもいいし、
帰ってきたなら岩泉さんにも会いたいはずだよね、青城にも顔出すのもいいなぁ・・・。
あとは普通に買い物してもいいし、また面白いのがやるみたいだから映画も行きたいなぁ・・・
なぁんて・・・