第1章 spring memory①
東京に本社のある会社に採用され、配属先となったのはここ、宮城の地。知り合いは、母の妹である叔母さんだけだった。
折角近くに勤務することになったから、休みの日にたまにはお茶でもできたらいいなと話していたのに、なんと会社の社宅が取り壊し新築になると言う衝撃な知らせを受けた先日。
社員は近くのアパートを借りるよう指示が出ていて、住宅手当は勿論会社から出るようになっているけれど・・・
全く土地勘の無い地でのアパート探しに困っていると、優しい叔母さんが神のような一言を放ってくれた。
「良かったらうちに来てちょうだいよ!旦那も単身赴任で叔母さんつまんないのよねぇ。部屋も空いてるし、よかったらどう?」
私の答えは勿論、イエスだった。
元々、よくお母さんに会いに東京まで来てくれたり、お母さんのお父さん、つまり私のおじいちゃんのいる病院にもお見舞いに来てくれていたから、気心知れた関係だったし、経済的にも色んな家電家具を揃えなくて済むし、めちゃくちゃいい話だった。
居候という形でお邪魔させて貰うことになった私は、入社前の新入社員の顔合わせの会に出席するために、今日、この地へ降り立った。
今日は、叔母さんは私と入れ違いで東京のおじいちゃんのお見舞いに行っているけど、明日には新居に着く。
新しく始まる新生活がとても、楽しみだった。
「さっ、行くか〜」
まずは、今日の宿泊先のホテルへ。
私はキャリーケースを転がしながら早々に電車に乗り、目的地へと向かったーーー・・・