第28章 1 years later①
ーーー・・・
3月のとある昼下がり・・・
家の掃除の休憩にとスマホを見ると着信履歴が1件。
私はそれに掛け直した。
RRRRRR・・・
ものの数コールで相手は出てくれた。
「もしもし?ごめんね、布団取り込んでたから電話気づかなかった」
《もしもし、いや別に大した用無かったからいいよー》
電話の相手・・・イタリアにいる及川さんはいつもの口調でそう話した。
「そうなの?」
《うん。てか、俺邪魔だと思うしまた後で掛け直すよ?》
「あ、大丈夫大丈夫っ、あとフローリングを乾拭きするだけだからっ」
まだ声が聴きたくて、電話を切ろうとするのを制する。
すると及川さんが、ふっと笑う声が漏れた。
「なーにー?及川さんとの電話、そんなに切りたくないわけ?」
"そ、ん、な、わ、け、な、い、で、しょ!"
なんて・・・、以前の私なら言ってたよね・・・。
だけど本当は図星で、こうも簡単に私の気持ちを悟れる貴方がちょっと憎らしかった。
「何言ってんのよ、・・・馬鹿」
そういう私の顔は、鏡で見るときっとニヤついてるんだろうな。
彼と離れて一年経つけど、未だにこうして電話一本で繋がってられているのが嬉しいから・・・
《なーんか、嬉しそうじゃん》
「べっつに?久々に家の掃除して気分いいだけです〜」
《あーそ。じゃついでに俺の部屋も掃除しといてよ。あと2ヶ月で帰国するんだし》
「一応毎週掃除は入ってるよ。今日も及川さんの布団も干したし」
《お、マジ?流石りお。いい家政婦さんになれるよ》
「家政婦希望した覚えないし。今日こっちは天気良いから、布団も干してすごく気持ちよくなったよ。今はまだ部屋に取り込んだままにしてる」
3月の宮城はまだ寒いけど、日に日にゆっくりとだけど春に近づいていってる。今日は風もなくて、絶好のお洗濯日和。
朝から洗濯2回もしちゃった。
「そっちはどう?今日は晴れてる?」
リビングをクイック〇ワイパーで掃除しながら尋ねる。
時差が8時間あるから今はまだ朝の7時かな?きっと。
「まぁ、まだ朝だしどうなるかわかんないけど、今のところ雨ではないかな」
「そうだよね。晴れるといいねっ」
できれば同じ清々しい青空の下で過ごしたいなぁなんて、乙女なことを思ってみたり。