第27章 Winter memory⑧
ちゅ・・・と額に口付けられる。
いつか・・・泣いてる及川さんに私がしたように・・・
一瞬だけ優しく触れられた唇・・・
「この先は、お預け〜♪」
「〜〜〜〜〜!」
ニヤリと笑った及川さんに、私は声にならない声を漏らす。
「もうっ!早くどいてよっ」
恥ずかしくてバタバタと暴れるとはいはい、と及川さんは笑いながら退いた。
「じゃ、言いたいこともお互い言ったし、寝ますか。支度したら俺の部屋おいで」
「え!?一緒に寝るの!?」
さらりと言った及川さんの言葉に、私は目が飛び出そうになった。
「なに、当たり前じゃん。及川さんに熱〜い愛の告白しといて、別々に寝るは無いでしょ」
「愛の告白って・・・っ、もう、言うんじゃなかった!」
泣きながら、大好きなままでいいですかなんて言った自分が今更恥ずかしくなった。
「ははっ、冗談だよ。一人が寂しいからそばに居てほしいんだよ。何もしないし、・・・それじゃダメ?」
肩ごしな振り向いてくる及川さん。
うっ、その甘えたような顔は反則だ・・・
「ダメ・・・じゃないけど・・・なんかもう色々流されてる気がしなくもないし良いのかなって迷ってるっていうか「なーにお経みたいにぶつぶつ言ってんの。ほら行くよ」
及川さんは部屋の電気をパチッと消して、私の腕を掴んだ。
「わっ!もう、暗がりでそんなに引っ張んないでよ〜っ」
最後の夜になっても、私は及川さんのペースに捕らわれたままだった。
そのまま二人で、一人分の布団に入った。
及川さんの言った通り、何も、なかった。
わかってるから鼓動は落ち着いていたし・・・
彼の顔が、安心しきった表情をしているのが見えた。
窓から見える月がそんな私たちを照らしていて・・・
遠くへ行っても、空は繋がってるから大丈夫なんてくさいこと言って笑い合った・・・
そしてどちらからともなく手を繋ぎ、お互いの温もりを分け合うように寄り添って眠りについた・・・
世界でたった二人、
私たちだけが知る、
静かな夜だった・・・ーーー