第25章 Winter memory⑥
「思えば僕がこのチームに入団して、去年が初のリーグ優勝でした。あの時の感動、達成感、充実感は今でも覚えています。そしてこの度、二連覇というプレッシャーがかかる試合を幾度も仲間と挑んできました。僕はこの仲間たちがいたから安心してトスを上げることができ、勝敗を託すことが出来ました。本当に、心から信頼出来る仲間です」
ちらりと及川さんは並んでいるチームメイトを見て照れたように笑った。
「そして今回、優勝が決まった瞬間・・・その仲間たちやスタッフの喜ぶ顔、ファンの皆さんの顔を見た時、またこの光景を見られることが出来たことが、とても幸せでした」
私も、今でもあの瞬間は覚えてる。
優勝が決まったときの、みんなの涙や笑顔・・・
眩しかったな。
「だけど、強さは永遠じゃない。今回、優勝という成績を残すことが出来たけれど、これで胡座をかいていちゃダメだと思います。先の事なんて誰もわからない。他チームにもいい選手は山ほどいるし、そのチームを寄せ付けないくらい、このチームはもっともっと、強いチームにならなければならないと、俺は感じたんです」
厳しい言葉。優勝したのに、まだそれじゃ足りないと言ってる・・・それはプロとしての、彼の思いだった。
「俺はセッターで、チームの司令塔です。要だと自負していますし、だからこそ、チームの為にも俺自身がもっと大きくならなければ行けないと思います。そうするにはどうしたらいいのか、監督と幾度となく話し合いました。・・・そして、この場を借りて皆様に報告することがあります」
ドクン・・・
心臓を鷲掴みにされた感覚を覚える。
及川さんから目が離せない。
彼が何を言おうとするのか、想像つかなくて・・・
「俺、及川徹は・・・」