第25章 Winter memory⑥
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及川さんのプレーを見るのは、2度目。
初めては、青城の体育館で、高校生の練習相手をしていた時だった。
あの時の及川さんはトスもサーブもレシーブもブロックも、全てが丁寧で無駄がなくて、上手いの一言だった。
だけど上手いのは彼だけじゃない。
味方の選手、対戦相手・・・
及川さんと同じくらい上手で、
及川さんよりも大きい選手がコートの中ではひしめき合っていた。
何度も床に叩きつけられるボール。それを自コートに落とさないように床に這いつくばってレシーブして、トスにして、打ち返す。
お互いが1つのボールを、互いのコートへと打ち込む・・・
日本一ハイレベルな試合、手に汗を握る試合。
気づけばセットカウント2ー2。
フルセットにまでもつれ込んでいた。
リーグ戦で何度も何度も対戦してきて、お互いの手の内は分かってる。ここまではほぼ互角に戦っている。
(頑張って・・・、及川さん!)
渡されたバルーンスティックは叩きすぎてへたりこんでいるけど、そんなの気にしてられない。
滴る汗をタオルで拭いながら、視線は勝つことだけを考えている及川さんを私はじっと見つめた。
このセットで最後・・・
これを落としたら・・・
ううん、そんなこと考えない。
私は、私も及川さんと同じように、勝利を信じなくちゃ!
手を胸の前で強く組む。
ピーーーッと鳴る笛の音と共に再びコートへ入る両チーム。
ここからは・・・
どれだけ勝ちたいか・・・
ただそれだけ。