第20章 Winter memory①
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「そうやって考えてくれんのは嬉しいけど、それで熱出されたら元も子もないと思いまーす」
はーい、と及川さんは呆れ顔で挙手する。
「うっ・・・すみません・・・」
自室で、火照った体をベッドに横たえて私は申し訳なさに布団を頭が隠れるまで被る。布団の外から、及川さんのため息をつく声が聞こえる。
今回ばかりはそんな彼に怒れない。何故なら、この私、北村りおは、発熱してぶっ倒れたから。
今まで私はインフルエンザは勿論、風邪すらもほとんど引いた事の無いのだが・・・決まって熱を出すのは・・・
物事を深く考えすぎた時。そして考えすぎて夜も眠れず寝不足になって体がオーバーヒートするからだ。
10代の頃はテスト勉強などでよくその症状をこじらせたことがあったから、流石に学習し、大学生の頃からは何事も程々にしていくように心がけていた。筈なのに・・・
及川さんの離婚が成立して数週間、普段通りに過ごしている彼にはやっぱり何処か元気の無いような気がした。
私は私なりにどうすればいいのかを考え、国見くんに相談しても、今は時間と本人次第だと言われてしまったから・・・他に打つ手が無く、ずっと四六時中考えて三日ほど寝られなくなってしまった挙句、熱を出してしまった。
突然熱を出した私を、及川さんは心底心配してくれたんだけど・・・
いざ原因と言うか、眠れなかった理由を白状したら冒頭の台詞を浴びせられたのだ・・・
まぁこれは、仕方ないよね。私が悪いし。
にしても、頭ぼーっとする・・・
もぞもぞと布団から顔を出すと、不機嫌そうな及川さんと目が合う。
う・・・ちょっとだけ、怖いかも。
及川さんはずいっと私に顔を近づけると・・・
ピタン。
「ひゃっ!冷たっ」
おでこにひんやりと冷たい冷えピタを貼ってくれた。
「バカりお」
「はい、すいません」
むにっと頬を摘まれ好きに遊ばれる。
「心配しすぎ。俺だって大の大人なんだから、そういつまでもうじうじしてるつもりは無いから」
摘まれる指先が冷たくて気持ちよかった。
及川さんの指の腹は私の頬を滑るように触れていく。
「ま、俺が元気ないって見抜いてたのは褒めてあげるよ」
「そ、そんなとこ褒められても嬉しくないし・・・」