第15章 Autumn memory①
「〜〜〜!やっぱり酸っぱい〜!」
足踏みしてその酸性感に耐える。顔が歪む〜
「うわ、顔ひどいよお前」
「及川さんのせいでしょ!」
どストレートな感想を言ってくる及川さんを睨む。
「だって食べれないものは食べれないんだよ〜ん」
ぴろぴろと手を振って舌を出す。
「何でも食べれるようになりなさいっ」
「りおは、俺の母ちゃんですか?」
ああ言えばこう言う。
口が減らないなぁ、ほんと。
だけどこれが楽だし、心地いい。
私たちの関係に、名前なんてないけれど私はこれからもこんな風にいたいと思う。
そりゃあ、恋人とかになれたらなんて、もしもなことは考えるけれど、彼の立場を考えるとそれは早く奥さんとの関係にピリオドを打ってほしいと迫る事になる。彼に負担かけることはしたくないし、奥さんとの関係を終わりにした所で私の元に来てくれるなんて確信は無いから・・・。
だから、ぬるま湯に浸かる訳じゃないけど、
今はこのままがいいな・・・
二人で一緒に笑い合えたら・・・
彼のそばにいられたら・・・
それ以上は何も、求めない。
「あ〜やっと最後の一粒食べ終わったよ〜!」
サービスの水で少し流し込みしたけど超酸っぱみかんを完食した。
「さっ、外のみかんも食べに行こっ」
そう言って、及川さんの服の袖をつかむ。
「ちょ、ほんと胃袋ブラックホールじゃん!」
及川さんの驚いた声を聞きながら、私たちは外にもあるみかんも取りに来た。
外は、昨日が雨だったから少し足元がぬかるんでる。薄らと霧が立ち込めているけれど、その中でもあちこちにオレンジの実がなっていて、私はそれに引き寄せられるように1つを背伸びして採った。
綺麗に剥いて、皮はあちこちに備え付けられたゴミ箱の中へ入れる。
「甘〜い、美味しい!ね、及川さんこれ食べてみてよ!」
振り返って彼に小粒なみかんを差し出す。
でも、及川さんはもう胃袋がギブアップみたいで苦しそうに首を振った。
もう、男の人なのに・・・
「男は女と違ってスイーツとか果物とかはちょっとでいいんだよ」
「そんなこと言って、こないだ私が作ったスイートポテトパイまるまる食べた癖に」
「・・・・・・サツマイモは野菜だしっ」
そっぽを向いた及川さん。ほんと、子供っぽいんだから。
・・・そうだ!