第14章 summer memory⑨
「え?じゃあトイレから出てどっかいってたのは?」
「あれは迷子の子がいて、本部に連れて行って迷子放送かけてもらいに行ってたの」
あの迷子放送ってりおがかけさしたのかー!
「携帯出なかったのは?」
「多分トイレに置いてきちゃってるんだよね〜」
「置いてきた!?」
「う、うん・・・ごめんね?」
だから、電話出なかったの!?
電話出ないくらい怒ってんのかと思ったし!
めちゃくちゃ焦ったじゃん!極めつけに国見ちゃんからそんなメッセージ来たから焦って俺の本音全部言ったんだけど!?
恥ず!恥ずかし過ぎだろ!
散々空回りした結果こんな恥ずかしい思いすんの!?
俺は内心膝をついて崩れ去った。
もうなんだよー、
こんな小っ恥ずかしいこと、大の大人が言ってるとか・・・
穴があったら入りたいレベルじゃん!
はぁぁぁぁぁ。
「ねぇ、及川さん・・・?」
未だに繋がれたままの手を見て、それからりおが恐る恐る視線を上げて俺を見た。
目尻のピンクのシャドウが、すげー似合ってる。
あー、女の子だ。
「さっきの・・・全部ほんと?」
・・・・・・・・・・・・もう。
何でそんな可愛い姿で可愛いこと言うんだよ・・・
俺の心臓もたないよ。
「・・・・・・うん」
お互いの熱が上気していくのが、繋いだ手を通してわかる。
「全部、ホント。・・・可愛いよ」
もうこの際、全部伝われ。
お前のこと、ちゃんと女として見てるから・・・
りおはまるで蕾から咲かす花のような笑顔で言った。
「・・・ありがとうっ」
それは、ちょっと照れくさそうで、でも心底幸せそうな笑顔で。
その顔を俺は見たかったんだと、思った。
その笑顔を見た瞬間・・・
「りお・・・俺、お前のこと・・・」
口が、心が勝手に動いた・・・
「え・・・?」
ヒューー・・・ドォォォオン!!
辺りを、大きな音と共に光が照らした。
「あ・・・花火・・・」
俺たちは川の向こうで上がる花火を、見た。
黄色、赤、青、緑・・・様々な色、大きさの花火が打ち上がっていく。
「綺麗・・・!」
りおは花火を見つめ、自然とそう呟いていた。