第13章 summer memory⑧
誕生日って365日のうち、1日しかないそれはそれは特別な日。
ましてや及川さんは、一応(一応ってなんだろう)私の片想いしている人・・・
大切な人の大切な日を忘れてるなんて・・・
柄じゃないけど、
乙女の、一生の不覚だ・・・!
それに何が欲しいかなんて全然検討つかない!
こんな時に頼れるのは・・・ーーー
「え、及川さんの欲しいもの?」
「うん。実は及川さんの誕生日知らなくて・・・今日ホームページで見て過ぎちゃってたってことに気づいたの」
明くる日の休憩時間に、
私のお悩み相談員、国見英くんに話を聞いてもらうしかなかった。
「及川さん、自分の誕生日アピールしそうなのに、してないんだね、なんか意外」
「そうなのよ。私もそれは思った!何か、T〇itterとかに、"あと数時間後に1つ歳とって男上がるなー"とか、"本日、俺、生誕祭"とか書き込んでそうなのに。Tw〇tterやってるかは知らないけど・・・」
「ぷっ、なんか想像つくね、それ」
あ、笑った。なんだか今日もいいことありそう。ってそれよりも・・・
「ねぇー、国見くん、本当に困ってます。男の人って何貰ったら喜ぶの?」
国見くんの大好きなアイスカフェラテを差し入れに、尋ねる。
彼はその"相談料"を飲みながら、ぼんやりと休憩室の天井を見上げる。
「ぶっちゃけ、男って単純だから、貰ったら何でも嬉しいよね」
「それは好きな人限定だよね・・」
「及川さんにとって北村さんってそうじゃないの?」
「それは絶対違う!ただの同居人だし・・・」
私の一方的な片想いは相変わらずだ・・・。
「ただの同居人なら、毎度毎度映画見たり買い物したり、自分の母校の練習に連れていったりしないでしょ」
はぁ、とため息をついて国見くんは言った。
「え・・・」
「まぁ及川さんはまだ既婚者だし、本当の気持ちはあの人にしかわからないけどさ、・・・北村さんの事、他の子よりは違う思いで見てると思うよ」
俺の推測だけどね、と付け足した国見くんの言葉に、きゅっと胸が締めつけられる気がした。
そ、
「そしたら益々、何あげたらいいかわかんないよー!」
「そこはちょっと舞い上がったりしなよ。北村さんってそういう所鈍いし女の子らしくないよね」
頭を抱える私に、国見くんはまた大きくため息をついたーーー・・・