第10章 summer memory⑤
「ほんと、馬鹿じゃないの・・・お前・・・っ」
嗚咽混じりの声に、りおのいつものため息が聞こえる。
りおが立ち上がる気配がしたけれど、俺は顔をあげられない。
涙が後から後から溢れて、キリがない。
すると、背中に小さな温もりが添えられる。
「馬鹿でもなんでもいいから・・・」
りおの小さな手が俺の背中をさすってくれる。
「ご飯はしっかり食べなさい。スポーツ選手は体が命、でしょ?」
すとんと胸の真ん中に安らかに入ってくるりおの声。
優しさも、愛も、誠実さも全部全部つまった言葉に、
俺は、ありがとうすらも、言えなかった。
ただひたすら、泣きながら、りおの作ってくれた温かなご飯を食べ続けたーーー・・・