第10章 summer memory⑤
鍛えられた胸板が頬にピタリとつくくらい、きつく、きつく抱きすくめられる。
「ほんと馬鹿・・・。代役なんて、そんな悲しいこと言うなよ」
そう言葉を絞り出す及川さんの顔は、見なくてもわかる。
「馬鹿だもん。こんな馬鹿じゃないと・・・好きになんないでしょ、あんたのことなんて・・・」
及川さんは甘えるように、私の首元に唇を寄せた。
「・・・・・・っ・・・!」
熱い吐息が、肌を撫でる・・・
でも分かってる。彼の心は、まだあの女の人の所にあるってこと・・・
「りお・・・・・・」
彼は顔を上げて、私の額に自身の額をコツンと合わせた。
「嫌だったら・・・言って?」
「・・・うん・・・・・・」
布団の上に乗った手が、彼の手と重なる。
「今日だけ・・・今日だけでいいから・・・」
もう片方の手が、私の頬に触れる。
目、鼻、口・・・
確かめるように、
触れた箇所が熱を帯びる。
「俺を・・・受け入れてほしい」
弱りきったあなたに、私がしてあげられること・・・
なんでもするよ・・・
「うん・・・」
そうして、私たちは唇を重ねたーーー・・・