第9章 どっちがいいんだ
「ゴム、持ってたよな」
秋也は立ち上がり、クローゼットの扉を開けた。
「ちょっと、普通勝手に女子のクローゼット開ける?」
「えっ、ダメだったか!?前に一度見たからいいかと思った」
慌てる秋也を見て、有はクスクス笑った。
「別にいいよ。意地悪言いたかっただけ」
「驚かすなよ」
「私以外の女子の部屋ではダメだよ」
「それは当たり前だろ。というかそんな所には行かない」
秋也は以前見た裁縫箱を取り出すと、蓋を開けて中を物色しはじめた。
有はその背中を黙って見つめた。
「当たり前だろ」…か。常識知らずで無神経な男だと思っていたけど、私の前でだけ気を緩めている、ってことだったのかもしれない。
そんなことを考えながら、コンドームを探し当てて装着する秋也をぼんやり眺めていた。
膝を立てて横たわる有の体を跨ぐようにして、秋也が乗りかかってきた。
ギシリ、と嫌な音をさせてベッドがたわんだ。
有の華奢なシングルベッドに2人分の体重は重たすぎる。
これからの行為に、ベッドはもっと大きな悲鳴をあげることになるだろう。
「床に傷ついちゃうかなあ」
「ん?」
「まあいいや」
有は目を閉じた。
秋也はゆっくりと顔を近づけ、有と唇を重ねた。
おだやかで、長いキス。2人はゆっくりと舌をすり合わせた。
秋也の唾液が、有の口内に降りてくる。有はそれを受け入れ、ゴクリと飲み込んだ。
有は秋也の顔を両手で包み、グイと身体を回転させた。2人の上下が逆転し、秋也の頭が布団につく。
有はモゴリと口をグネらせると、湧き上がった唾液を秋也に流し込んだ。
秋也も音を立てて有のそれを飲み干した。