第19章 バレンタインは女の勝負
翌日私は居酒屋との合間に駅前でシックな黒と赤の箱に入ったちょっと良いチョコレートを購入した
居酒屋は盛況のままに無事終わり
何時もの様に駅前で待っていてくれた彼の元に駆け寄る
「転ぶよ」
なんて注意する彼はやはり保護者的だ
鞄に仕舞い込んだチョコレート
渡すならタイミングは今かもしれないが………
「お疲れ様」
「お疲れ様です!」
彼を目の前にして怖じ気づく
普段と変わらず凛と佇む姿はどこか上品で目が合うだけで吸い込まれそうな気持ちになり本当に好きなのだと実感する
傍に居られる事が嬉しくて幸せで仕方ない
そして、それと比例してドキドキと高鳴る胸は彼に聞こえてしまいそうだ
「どうしたの?寝てるの?」
考え込んでいると顔の前で手をヒラヒラされてしまった
「……私立ったまま寝れません」
的外れな彼の言葉にラブロマンスな気分は一気に失せて行く中ボヤボヤしている私の手首を掴み先立って歩き出す
サラサラと風に流れる髪から彼の香りを感じた
(同じシャンプーやのになぁ……良い匂い……私変態やわ……)
暫く歩いていると自然と離れた手
チョコレートを渡すタイミングを伺うが心地良い無言の中言い出せずとうとう自宅に帰り付いてしまった
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