第145章 ひとつの布団
そしてワイン瓶はあっという間に空になった
「………俺追加買ってくる」
「え!」
「まだ飲みたいし。沙夜子も飲むでしょ」
「私も一緒に「待ってて」
有無を言わさず出て行った背中
彼が飲みたいと言うのは珍しい
テレビも付けずにお喋りを楽しんでいた部屋に静寂が訪れて途端に静けさが耳に付く
「………。」
私はやる事も無く暫くぼんやりした後に然り気無く布団を近付けた
何時もの距離に並んだ布団
普段と変わらないのだから彼は何も言わないだろう……
何か言われても知らないふりで通そうと思う
バスタオルでガシガシ髪を拭いつつそんな事を考えていると控え目なノックが聞こえた
私は直ぐに駆け寄り扉を開く
「お帰りなさい!」
「ただいま」
真っ直ぐ見上げた彼の視線の行方が私には直ぐに解った
「成る程ね。」
「~っ!!!!」
事も無さ気に呟いた彼は「襟元締めた方が良いよ。」なんて普段と変わらない声色で言うので私は恥ずかしいのか腹立たしいのか解らなくなった
「イ……イルミさんこそ締めた方が良いですよ!大体私なんか全然あいてないし!」
事実だ。彼に成る程と言われた途端に襟元に手を遣った私だが少し緩んでいる程度だった
そこから察するに別に下着が見えたとかお腹迄見えた訳では無く申し訳程度に付いている胸の谷が見えたくらいだろう
それと比べて彼は腹筋迄見えたのだ
私を指摘している場合では無いと思う
「俺は別に男だし。」
「男やから何ですか!見えてたら見ますよ!!腹筋すげぇってなります!!」
その後2本目を空けながら私は彼の肉体美について語った
彼は終始呆れた表情を浮かべていたが私に意地悪したのだから遠慮無く付き合って貰った
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「沙夜子もう眠るよ」
「嫌です」
2本目もすっかり無くなった
夜も深くなる
眠らなければいけない事は解っていても楽しい旅行が過ぎてしまうのが嫌だった