第18章 何でもないヒトコマⅡ
私は有無を言わさず支度をする
イルミさんには普段使っているお風呂セットを
私は旅先で使うコンパクトな物を手に持ち家を出た
近所に銭湯は一店舗しかない
私の生まれるずっと昔から営業しているであろう暖簾をくぐり
番台にて先にお金を払って別々に別れた
彼は潔癖では無いが綺麗好きだ
私はアルバイトで部屋を留守にする事も多いが、殆ど外出しない彼はずっと部屋に居るが散らかっていた事など一度も無い
特段掃除をした痕跡も無いが、出した物は元の位置に戻してくれているし少し増えた私物もキッチリと段ボールで管理してくれている
そんな彼が大勢の人が出入りする大浴場に入るのは抵抗があるかも知れないがイルミさんと暮らして1ヶ月、彼が突拍子の無い事を仕出かしたりした事は一度たりとも無い
(大丈夫やろうけど………心配やわ)
女性にしては入浴時間がかかる方では無いが、普段よりも急いで外へ出た
「早かったね」
「そうですか?イルミさん、どれくらい待ちました?」
「5分くらい」
「そうですか、すみません。帰りましょう」
「うん」
「湯冷めしてません?」
「平気」
「大浴場いかがでした?」
「他人とお風呂に入るなんて変な気分だったよ」
「………苦手ですか?」
「そうかも」
なんて話しつつ帰り道に肉まんを買って帰った
冷たい風が暖まった頬を掠めて心地良かった
その日布団に入ってからイルミさんと旅行に行くなら貸し切り出来るお風呂が付いている所か、部屋風呂だな……なんて考えながら旅行サイトを見ていたのは彼には秘密だ