第141章 なんでもないヒトコマ
12月17日月曜日
アルバイトから帰宅すると彼の仕事用靴が玄関に揃えられていた
「ただいまです!」
「お帰り」
部屋を見渡しても彼の姿は見えない事に一瞬絶望感を覚えるも
見えないが声は聞こえるという事は洗面所、もしくはトイレだ
キッチリ揃えられた彼の靴の隣に靴を揃えて室内へ入れば物音から察するに彼が洗面所にいる事が解り覗き見ると彼は何故か洗面所の床をバスタオルで拭いていた
「え?」
彼は長い髪を纏めて後ろに結んだ姿で顔を上げるとびちゃびちゃのタオルを洗面台で思い切り絞った
「えっと……何が……」
「帰ったら水浸しだった。洗濯機が壊れたんじゃない?」
彼に言われて確認してみれば確かに洗濯機がおかしい事が解った
中の洗濯物は中途半端に濯がれていてまだまだ洗剤が残っていた
このままでは干せないので濯がなければならないが三日間溜めた洗濯物全てを綺麗に濯ぐのは途方も無く時間がかかり考えただけでも面倒だ
「………イルミさん床ありがとうございました」
「別に。」
私は彼に頭を下げてキッチンに向かい大きなゴミ袋を手に洗濯機の前へ行くとその中に全てを移した
「今からコインランドリーに行ってきます!」
「コインランドリー……?」
「はい!イルミさんはゆっくりしててくださいね」
「………。」
彼に微笑み掛けて意気揚々とゴミ袋を持ち上げる
水を吸った大量の布はかなり重たかった
しかしゆっくりしていてと伝えた手前、手伝ってとは言い辛く私は余裕なふりをして玄関へ向かったのだが
不意に袋を取り上げられて
「一緒に行く。」
と言った彼に胸キュンした