第74章 嵐の街
びちゃびちゃのTシャツよりも幾分かマシなキャミソールに成った事で寒さは先程より和らいだ
しかしまだまだ肌寒いので入り口付近から取って来たブランケットにくるまる
彼にもブランケットを進めるが匂いを確認した後に眉を潜めて丁重にお断りされてしまった
私も嗅いでみるが良い香りがした
何がそんなに気に入らないのか解らないが彼が嫌なら無理強いは出来ない
かなり目のやり場に困ってしまうが横並びなので見なければ良いと判断して落ち着かない胸を無理矢理に抑える
チラリと隣を見遣ると彼は繁々とデスクトップの画面を見ていた
そう言えば彼が此方に来てからパソコンを見るのは初めてかもしれない
「これ……電脳ページだよね。ミルキの部屋にあったし俺も使ってた」
「あー、そんなもんですかね?此方ではインターネット。パソコンって言います」
「ふーん」
途端にマウスを使って操り始める彼は器用だ
「………イルミさん」
「ん」
「……お酒飲みませんか?暖をとりたい」
「うん」
カチカチとクリック音が鳴りあっという間におつまみ迄注文してしまった彼に小さな拍手を送る
彼はパソコンに夢中な様で目まぐるしくページを開いていて彼はこんなにもネットに興味があったのかと様子を伺ってしまう
スマホでもネットは出来るはずなのだが普段スマホを触っている素振りも見せない彼に疑問が浮かぶ
「イルミさんインターネット好きなんですか?」
「好きでは無いけど職業病かな。色々情報網広げてないと落ち着かないんだよね」
「そうなんですか。……スマホでも見れますよ?」
「知ってる。沙夜子が居ない時はチェックしてる」
「……そうでしたか」
彼なりの気遣いなのか私の居ない内に何かしらの情報収集をしているらしい
暫くしてやってきたハイボールとビールで乾杯しながら唐揚げを摘まむ
ネットの主導権を私に託した彼に代わり二人で何か観ようとインターネットカフェのサイトで見られる映画を探し私の好みで再生し、彼にヘッドフォンを手渡した
私が再生したのは【フェイスオフ】
ニコラ○・ケイジとジョン・トラヴォ○タが二大巨頭で主演を演じた名作(だと勝手に思っている)