第71章 ミッション
彼の話しからして明らかにホームがレスのおじさんだろうが、汚く袋を引きちぎり態々腐った生ゴミを荒らすなんて事は絶対にしないと思う
「そうなんだよ沙夜子、良く解ったね。犯人はおじさんじゃ無かった」
「………はい………」
彼の中で有力な犯人候補が消え、くる日もくる日も荒らされる生ゴミに彼は沸々と怒りを覚えていた
何の手掛かりも無いままに季節は6月、彼はモヤモヤとした気持ちを抱えて自身の無力さに苛立っていた
しかし、ある日転機が訪れる
その日ゴミ出しに出ると電線に止まった黒い影と目があった
彼は鋭い勘が働きその時何故だかピンと来たそうだ
そして相手を油断させる為に一旦家へ引き再び出勤の際にゴミ置き場を確認すると生ゴミは無残にも散らかされ、其処には挑戦状の様に黒い羽根が落ちていた………
彼の中で容疑者への疑惑は犯人への確信へと変わったらしい
「まさか空からの刺客だとは思わなかったよ………」
その日を境に彼とカラスとの静かな戦いは幕を開く
彼がゴミを出す際には決してカラスが地面に降りてくる事は無く彼が一旦引いた間に袋が荒らされている事は明白
彼は針を使い全部で5羽いるカラスの群れを全滅させる事を考えたが
「其れは駄目なんだよね。人間は小さいものを守るんだっけ。沙夜子が教えてくれたでしょ」
とライオネル親方をチラリと見遣り話す彼