第7章 〜組織の一員〜
病室へ入って、目の当たりにしたのは、ドラマで見る機械がいっぱいあって、そこから伸びる管が全て透さんに繋がっているところ。真ん中にあるベッドには包帯をいっぱい身に纏った透さんが横たわっていた。
『透さん...?』
風「じゃぁ、僕はこれで、帰るとき警備の方に、報告して下さい。」
風見さんが後ろで話している。声は聞こえる。理解もできる。けど、目の前に広がる光景は理解出来なかった。
『透さん...。約束したじゃないですか。ずっと一緒に居ようって。いつか結婚しようねって。』
私は泣きながら透さんに話しかける。
『ねぇ、透さん...目を覚ましてっ...!』
泣きながら透さんの手を握る。握りしめた透さんの手は冷たかった。私は透さんの手を握ったまま眠った。
────────...
透「真恋音さん。」
『透さん...?』
透「さよなら、真恋音さん...。」
嫌だ、そんな事言わないでっ!真っ黒な世界の中で、透さんが消えそうになる。
トントン────
風「真恋音さん...?魘されてましたけど大丈夫ですか?」
『ううっ..透さんっ...!』
風「嫌な夢でも見ましたか?」
『はい...。透さんにっ...さよならを、言われましたっ...。』
私は涙を流しながら、繋がれたままの手の先を見る。ぼやけた視界の中で確認できた。透さんはまだ息をしている。
『良かった...。』
私はそう言って、透さんの手を握り返した。透さんの手はまだ冷たい。でも生きている。それだけが救いだった。
それから透さんの病室へお見舞いに行く生活が始まった。毎日日記も付けることにした。いつか透さんは目を覚ます。約束したから。ずっと一緒だよ、って。それだけを信じて、毎日通った。
10月20日。
透さんの入院2日目。目を覚ます気配は無い。毎日ずっと泣く日々。大学院も暫くおやすみする事にした。
10月25日。
街がハロウィンに染まり始めている。透さんの病室にも南瓜を飾ってあげた。
11月1日。
透さんの手が少しだけピクって動いた。でも目を覚まさなかった。それだけの事で静かに泣いた。
11月11日。
今日はポッキーの日。一人で食べた。来年は透さんと食べたいな。