第7章 〜組織の一員〜
帰りの車の中。ずっと透さんは手を握っていた。
『今日はよく、手を繋ぎますね。』
透「本当に近くにいるのか確かめているんです。暫く、会えなくなるかもしれません。大事な任務を任されてしまったので。」
『危険な事じゃありませんよね?』
私は不安になってそう聞いた。透さんは何も言わなかった。あぁ、危険な事なんだ。私がそれ以上は踏み込んではいけない事。
『待ってますから、生きて帰ってきて下さいね...。』
透さんを見ると悲しそうに微笑んでいた。
透「無事に帰って来れなかったら、その時は僕から離れてもいいですから、待たなくて良いです。」
『そんな事!絶対に待ちます。何があってもずっと透さんの傍で。』
握られた手を強く強く握り返した。透さんもそれに応える様に握り返してくる。今を生きている。絶対に生きて帰ってくる。透さんは私を家まで送ってくれた。
透「僕が居ない間、大尉のお世話をお願いしますね...。では、さよなら。」
『またね、ですよ。さよならじゃないです。』
さよなら、と言った透さんにもう2度と会えなくなる気がして、またねと言った。また会えるよね?絶対に────。去っていく透さんの車を見て、私は泣いていた。
それから数日間、透さんから何一つ連絡は来なかった。大尉の面倒を見に、透さんの自宅へ行っても不在だった。何処にいるのかさえも分からない。もう会えないのかな。
『ね、大尉、私の家に来ない?ここは透さんも帰ってこないから寂しいでしょう?』
大「んにゃん?」
『うん、透さんに会いたい?』
大「にゃんっ!」
『会いたいよね、私も。』
私はそう言ったあとに、悲しくなってきた。泣きそうになって、でも、泣いたら本当に透さんに会えなくなりそうで、我慢した。
するとガチャンと玄関の開く音がした。
『透さんっ!?』
と振り返ると見知らぬ男の人が2人。長髪の男と、サングラスを掛けた、男だった。
?「アニキ、なんでバーボンの家に女がいるんですかね?」
?「さあな、俺の知ったことじゃない。鼠の女なんじゃねぇのか?」
?「始末しますか?」
?「いや、無駄に他人を殺すのもあれだろう、何も知らせれていなければの話だけどな。ウォッカその女に話を聞け、俺はアイツがここにいた証拠を始末する。」