第16章 年末年始といえば...※R18
「おっそいな〜。」
私はごく普通の女の子。子っていう歳でもないけど.....。
(何してんだアイツ......。)
12月31日夕方5時に、地元では有名な居酒屋に、待ち合わせを申し込んで来たのはあっちだと言うのに。
「ごめん、遅くなった!」
「全く、乙女をいつまで待たせんのよ、30分の遅刻。奢りね。」
「俺が誘ったんだから、元々そのつもりだし。」
そんな事を言いながら、2人用のテーブルに向かい合わせに座ったのは、私のアルバイト先の同僚、降谷。通りすがりの店員に「生1つ」と、手馴れた様子で頼んでいた。まぁ、私も既に生を頼んで、呑んでるんだけどね。
「おっそいし、何してたの?」
「今年中に提出のレポート、必死に書いてた。そしたら電車に乗り遅れた。まぁ、ごめんって。」
私の眉間のシワが見る見るうちに寄っていくのに気が付いたのか、最後には一言謝った。
「なぁ、いつまであんな所で働くつもり?」
「あんなとこって、降谷も働いてんじゃん。」
あんな所とは、うちの職場の事。まぁ、いわゆる人手不足で、時給はそこそこ良いけれど、潰れる一歩手前なのだ。
「降谷が来たから、首の皮一枚繋がった感じだよ。」
「それでも、一ノ瀬の容量だったら、もっと上の会社に就職出来ただろ?」
そんな事を言われても、就活に失敗したのだから仕方ない。今はあの職場で満足しているし、休みの日には降谷とこうやって呑みに出かける事も出来るし、充実している、と自分では思っている。
「なにをぼーっとしてるんだ、ちゃんと将来の事考えてた方が良いぞ。」
「なにを偉そうに、そういう降谷は、就職先とか考えてんの?大学、今年で卒業でしょ?」
「ちゃんと考えてるよ。俺は警察官になりたいんだ。」
警察官...。面倒見の良さげな所といい、街中で悪い輩を見かけたら、速攻注意する正義感といい、降谷にピッタリの職業ではないかと思った。
「あははっ、降谷にピッタリじゃん!」
「それはどうも。あんまり本音に聞こえねーな。」
「本当だって! ピッタリ過ぎて、笑いが堪えきれなくなっただけ.....。それはそうと、私をこんな日に誘ったのは、また今日もどっちかのお家に行く予定?」
「あぁ、そうだな、今日は俺の家で。」