第12章 〜不穏な気配〜
電話をした日から体調はすこぶる良くなって、毎日、零さんと連絡を取り合うのが楽しかった。でも今日、その連絡がパタッと途絶えた。
『どうしたんだろう。』
私は色々考え、悩んだ挙句に、零さんの直属の部下である風見さんに連絡を取ることにした。久々に電話をかけるので少し緊張して、風見さんは3コール位ですぐに出た。
風「はい、風見ですが。」
『もしもし、あの。零さん、居ますか?』
風「真恋音さんですか?降谷さんなら、先程、書類処理を全て終わらせて、帰られましたが?」
『え?それは本当ですか?』
風「ええ。てっきり直帰して、もう其方に着かれているものだと。」
『そうですか。ありがとうございます。』
風「いえいえ。では。」
『はい。失礼します。』
私は胸騒ぎがして、零さんに何度も電話を掛けた。でもその電話に零さんが出ることはなくて。虚しい機械の声だけが、私の耳を貫いていた。
どうしたんだろう。事故にあったのかもしれない。でもきっとそうじゃない。もしかしたら。と一番最悪な事が頭をよぎる。
『また危険な事になってるんじゃ...。』
でもきっと大丈夫。零さんは私を置いてそんな事したりしない。なんの前触れもなく。こんな事出来るような人じゃない。前も、最後に私に会ってくれた。帰ってきた時は、見てられない姿だったけど。
『きっと...大丈夫だよね...。』
自信なんかこれっぽっちもなくて、不安が毎日募っていくばかりで。それでも。それでも、零さんからの連絡を待ち続けて。零さんの事を信じていたくて。何日も経ったある日、マンションのインターホンがなった。
『はい...。どなたですか...?』
?「降谷零くんのお嫁さんかな。」
『はい...。そうですけど。』
?「少し込み入った話がある。ドアを開けてくれないか?」
『いや、夫にきつく言われてるので。見知らぬ人が来ても、決してドアを開けぬようにと。』
ドアを開けてくれ。とそんな頼みをしてくる人物、信用できる筈がない。只でさえ、零さんに連絡も着かなくて、精神も参っていると言うのに。体調だってまた悪くなって吐き気もするというのに。
ほら、また目眩が...。
そこから私は意識を失った。