Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第1章 出会い
「お父さん、私仕事辞めようかと思ってるんだけど」
ナツは数日間悶々と悩んだ結果、全ての元凶である父に相談することにした。
「え?何かあったのか?」
電話越しではあるが、案の定父は微妙なリアクションをしている。
「いや、何もないけど。もう少し精神衛生上平和なところで働きたい」
「うーん、それは困ったな。あいつとも付き合い長いから、頼まれて引き受けたんだが…」
父の話を詳しく聞いてみると
何でも看護師を始めとする女性職員が院長に虜で鬱陶しいどころかまともに仕事をしないからと、院長に興味のなさそうな人間を紹介してほしいと内部の人から頼まれたそうだ。
「よくもまあ大事な娘をそんなヤバそうな職場に放り込んだもんだな。……私辞めるから。次の人もその調子で頑張って探してね。」
なるほどそういうことだったのか。漸く雇われた意味が理解できた。
お父さんには悪いけど、これ以上あの病院で働く気はない。
次に期待してもらおう。
「だからそれだと困るんだよ~、お願いだからもう少し頑張ってもらえないか?お父さんの顔を立てると思ってさ!」
「お父さんの顔が立たなくても私は何の問題もない」
「えー!?たーのーむーよー!」
電話越しに聞こえてくる、非常に情けない父の声。
いつものほほんとしている父は一体どこに、この粘り強さを秘めていたのだろうか。
ナツはしつこ過ぎる父にドン引きし、携帯の通話終了マークをタップする。
切ってはかかってきて、切ってはかかってきて
それを繰り返すこと68回。
折れざるを得なかった。
娘を犠牲にするとはなんて野郎だ。
「ありがとうー!お父さんなんでも買ってあげるから!もう少し頑張ってみてね!」
電話越しの嬉しそうな父の声。
物欲など皆無なナツを物で釣ろうとするとは、相変わらず学習能力のない父だ。
(……はぁ、まだ月曜日だし)
ナツは明日からもあの病院に出勤する事実にこっそり、いや盛大にため息を吐いた。