Why大奥!?Trafalgar医院【ONE PIECE 】
第8章 ロー
逃げ回り初めて早々に、コラソンは限界を感じていた。
背後から撃たれ続け、最早何発命中したか分からない。
致命傷こそ負っていないものの、痛みを堪えながら走る彼のスピードは
確実に遅くなっていく。
「いい加減、諦めたらどうだ?」
この建物の構造は熟知していたコラソンではあったものの、多勢に無勢。
何手にも別れて追ってくる彼らをまきながら逃げていれば
逃げた先が行き止まりのホールだと言うことも、珍しくはないだろう。
最初から逃げ切る事を目的としていた訳ではなかったコラソンであったが、まだ鬼ごっこの開始から然程時間は経っていない。
銃を構えてにじり寄ってくる男達の姿を見据えながら
意外と強い脱獄仲間の彼女は無事に逃げ切れたのだろうかと、コラソンは舌を打った。
「…~ッ!!」
鳴り響く銃声と共に、右足に感じる熱と痛み。
顔を歪めながら、彼は壁を背にズルズルと座り込んだ。
追い詰められたこのホールに、もう逃げ道はない。
コラソンは荒くなった呼吸を整えると、諦めたかのように自嘲気味に笑った。
「秘文書を何処へやった?それを言えば命だけは助けてやる」
コラソンに突き付けられるドフラミンゴの銃口。
彼はこんな状況にも関わらず、懐からタバコを取り出すとそれに火をつけた。
「秘文書か?……悪いな、つい燃やちまったよ」
バンッ!!
彼の頬を掠めた球は、そのまますぐ横の壁にめり込んでいた。
「この期に及んで冗談か?命が惜しくねぇのか」
額に青筋を立てているドフラミンゴ。
彼の銃口は、その照準をゆっくりと弟の心臓へとずらす。
「もう一度聞く。秘文書はどこだ?」
次に引き金が引かれれば、その銃弾は心臓を撃ち抜くだろう。
そんな事は分かっている筈のコラソンは、ゆっくりと煙を吐きニヤリと笑みを浮かべた。
「聞こえなかったのか?燃えちまったと言っただろう」
彼の言葉が静かに部屋に響き渡る。
引き金に掛けられていた指が、動いた気がした。
「そうかよ。……じゃぁ、くたばるんだな」
相変わらず気の短い兄の様子に、コラソンは苦笑いを浮かべゆっくりと瞳を閉じた。
脳裏に浮かんだのはローと、脱獄仲間の彼女の姿。
2人とも無事で居て欲しい。
まだ若い彼らが、気の狂った兄の魔の手に落ちないことをただ、祈った。